見極めたい、“後悔”しないためのこだわり女子会
定位置の小さな業態のほかに、行商や移動販売、御用聞きなど、酒屋さん、米屋さんらがいろんな商品を買い集めて持ってきてくれるような、訪問販売もあった。
ふりかけ商品も、今のように何十アイテムも並んでいるわけではなかった。
メーカーによるふりかけ商品が、ほとんど独占的に販売されていその土地の小の大金で請け負われた。
ふりかけを、食品の中で一歩高級化への位置づけとして狙った「のりたま」については、発売前から私はこの商品に自信を持ち、期待を寄せていた。
商品そのものの品質はまず完璧であるとの自信があったので、この商品の『顔』となるデザインについてあれこれ考えた結果、当時高名のデザイナーO高氏考案のデザインを採用した(前出『私のアルバム」) 。
「のりたま」の産みの親、A部S吉氏の記述から。
彼の「のりたま」に対する自信と期待がよくわかる。
デザインのO高氏というのは、七O年万博のシンボルマークなどもデザインしたO高猛氏の仕事と言われている。
というのは、ご本人は忘れてしまったということで、このデザインについて突っ込んだインタビューをすることはできなかった。
しではない、これまでにはなかった新発売の商品として、デビューさせるための策として、法外なギャランティを支払ってまで、デザインに思いを込めた丸美屋川A部S吉の気持ちはわからないでもない。
パッケージデザインが、商品としてどのような役割を果たすのか、パッケージデザインに関わる専門家にインタビューすることができた。
凸版印刷株式会社事業部プロデューサーのN匹芳樹さんは武蔵野美術大学卒業後、占版印刷の企画部門で、アートディレクターとして三近くパッケージデザインに携わっておられる今回はたま」のパッケージデザインを中心に、戦略としてのパッケージングについて話していただいた和三五九六O年に発売され、三九(一九六四)年を大ヒットしました。
ッケージデザインの果たすべき役割とは何でしょうか。
並田現時点での役割からお話しましょう。
まずメーカーさんの工場で製品が、ふりかけそのものですね。
そのまま売場に置くことはできません裸のままでは商品にならない、つまり製品に洋服を着せてやるつまり包装してあげることが必要ですこれで製品は商品として初めて売場に登場できます売場にはいくつもの商品が並んでいます客が何を買おうかとやってくる一秒間に何十という商品が目に入りますその中でどれを選ぶのか選んで買ってもらうための包装、パッケージング、になります。
つまり買わせるための最適な包装の計画がすなわちパッケージデザインアイカードマ(A IDMA ) の法則で説明するとわかりやすいでしょう。
客が商品の購買を決定するまでの心理過程を示したもので、一九一七年にアメリカ広告業協会初代会長のE ・レウスが提唱したコミュニケーション・スペクトル(段階) 説です。
売場で必要なのは、まず注目させ、記憶させて、購買するという行動にいたらせるという、マーチャンダイジングでは基本の考え方なのです。
この五段階が一瞬のうちに行われるわけで、中身を食べて判断するわけでは役いのですから、売場ではパッケージデザインがすべてを決める鍵になります。
こうして特に新しい商品の場合、一回は買わせるためのデザインをする。
そのあとリピートしてもらうかどうかは、おいしさをはじめとする品質、価格、利便性などの総合評価になります。
ということで、売場を戦場に見立てると、企業という国の兵隊H製品に、パッケージングという武器を持たせるのが、僕たちの仕事なのですね。
ですから特に競合商品との関係において、最適な武器づくりをする、その計画がパッケージデザインといえるわけです。
並田冷静に当時をふりかえってみてください。
売場は?競合品は?と考えると、今とはまったくちがいますよね。
極論をいえば、どんなデザインであってもよかった、ということですたま」にかぎったことだけでなく、高度成長期に入り、出せば売れる、つくれば売れる大衆消費社会という背景があるからです先程のAIDMAの法則でいえば、ふりかけの新商品というだけでAIDMAは成立します加工食品そのものが興味の対象になり一度は買ってみょうかなという働きかける要素がそろっているからですたまパッケージの当時の売場における評価すべき点をあえてさがすなら、ネーミングです。
ダイレクトに伝える表現はなかったのですからヒットし、今でも定番としてあるのはこの一語につきますね。
もちろんご飯にふりかけるだけでおいしくて値段もリーズナブルだったという、総合的な評価を忘れてはいけませんが!ということは並田さんならこのデザインは使わなかったということですか。
並回そうです基調色の緑は後退色です沈んでしまう色なのです当時の売場から見て目立つことを第一におけば、前進色を使うべきでしょうただし当時はそれでよかった昭和三ら四にかけてデザイナーという職種は認知されましたデザイナーの前は、図案家と呼ばれていました。
図案家は画家をめざした人がなる場合が多く、現在使われているマーケティング戦略に基づいたデザインの概念に対する意識は低かったと思います当時の図案家が、今のデザイン業界の大御所になっています。
今でも残っている商品でいえば、「カルピス」でも「チキンラーメン」でも、マーケティング戦略的に考えて、最適なパッケージデザインかどうかは疑問です。
先駆者は何でもいいのです。
おいしければ、定番になる時代ですから、「のりたま」のパッケージも、何でもよかったと思いますよ。
ただし、現在の売場においては、この後退色は逆に目立ちます。
周囲が前進色ばかりですから。
色、ロゴタイプ、イラストレーション、ネーミング、キャッチフレーズパッケージデザインは、こうした一連の作業のなかで科学的に計画されていくものなのです。
単に目立つとか美しいとかだけでは、判断できません。
並田当時は、今のパッケージにはできない、おおらかで自由な表現が可能でした。
あったかみというか、素直な表現、ネーミングも、イラストレーションにもそれを感じます。
丸美屋の社長の思い入れ、それを受けた図案家の思い入れ、つまり「のりたま」に関わった人々の思いがしっかり出ているのです。
モノづくりに一番大切なこの部分を、きちんともっていたことが「のりたま」の最大のヒット要因だったのではないですか。
最近はヒット商品をだすのは困難ですが、その理由はひとつです。
一番大切な部分を、企業も担当する人たちも忘れて、これをつくりたい! という意識が希薄になっているからなのです。
ヒット要因の根底には、つくりたい、売りたい、伝えたいという思いがないとだめなのですね。
平成一二(二000) 年一二月八日談そういわれてみれば、「のりたま」のパッケージは暗い。
鶏の絵だって印象深いものでもない。
当時の薄暗い小さな棚で、とびぬけて目立ったとも思えない。
なのに、「のりたま」は四O年愛され続けた。
「のりたま」のおいしさと、実はその裏に隠された、つくり手の思いだった、というのは、とても明快な解答になっている。
旅館の朝ご飯にヒントを得た、海苔と玉子。
それまでの海産物ベースのふりかけ商品に、ポンと加えられた玉子。
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